ブログ説明

株式会社フルハシ環境総合研究所による環境問題、環境経営に関する提言・オピニオン発信を目的としたサイトです。

2015年3月16日月曜日

38.どうなる日本の農業-「危機」を煽るのではなく「魅力」で解決するための一考察-(3)

GMMは地球環境問題を前向きに解決し、「緑豊かな」地球を目指すという意
 味を込めて、「グリーンメールマガジン」と名付け、皆様にお届けする環境
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 2015年3月13日発行 株式会社フルハシ環境総合研究所
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        GMM [Green Mail Magazine] No.252
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【本日の特集】
1.どうなる日本の農業
-「危機」を煽るのではなく「魅力」で解決するための一考察-(3)       
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【農業はより良い生き方を教えてくれる】
弊社主催のビジネスセミナー「名古屋藤原塾」会員の杉本貴子さん(有限会社
プラネット代表)は、無農薬・無肥料の自然栽培農業を手掛けていらっしゃい
ます。先日、「農業をやっていると自然の摂理が見える」という興味深いお話
をお聞きしました。例えば野菜に虫がつくことがあります。そこには土の窒素
過多などの原因があるにも関わらず、農薬を撒いて表面上の問題を取り除いて
しまう。虫が問題を知らせるサインを出してくれているのだから、そこにある
本質的な問題を無視してはいけない。それは人間の場合も同じ、体調が悪い時
に無理やり薬を飲んで治してしまう。それでは根本的な解決にはなりません。
人も植物も自然のシステムの中で生きています。そう捉えると、植物を育てる
ことから自然のシステムを学べば、人は「より良い生き方」ができるようにな
ると杉本さんはいいます。こんな考え方にも、農業の「危機」を煽るのではな
く「魅力」で解決するためのヒントが見え隠れしているのではないでしょうか。

さて、それでは前号に引き続き、犬山農芸の佐藤さんのインタビューをご覧下
さい。
【地域の人と相互に助け合う】
佐藤さんは犬山農芸の仕事、その他の仕事をこなしながら、それとは別に年配
のご近所さんの田んぼの守り(稲を育てること)もしています。研修用の田ん
ぼは「イベント用」としてみんなで手植えをしたり、不耕起栽培を試みたりし
ていますが、ご近所さんの田んぼは機械で作業を行っています。
「最初は大根も何でも小さなポットに全て種を蒔くと思ってたくらい何も知ら
なくて、奥さんに馬鹿にされたよ」と言うほど名古屋の都会生まれ、都会育ち
だった彼はなぜそこまで色々できるようになったのでしょう。
犬山農芸の理事は佐藤さん含め3名いて、2名は犬山農芸を立ち上げる際お願い
して理事になってもらった地元の人だそう。「よそ者」であった佐藤さんと地
域のつなぎ役であり、「地元の人と一緒じゃなければできなかったと思う」と
言います。
そして彼が農をやる上での根となる考え方を教えてくれたのが、近所の90代の
おじいさん。引っ越してきた当初、そのおじいさんに言われたのは「農業って
いうのは土に還す仕事だぞ」という言葉。
「都会にいた頃は、無農薬の野菜がいいとかオーガニックがいいとか消費者的
な視点でこういう野菜がいいという考えがあったんだけど、おじいさんに言わ
れて、たとえば近所にお豆腐屋さんがあるけど、そこで出たおからを畑に戻す
のが僕らの仕事で、結果が野菜だと分かったんだよね。生活していく中で出た
色々なものを土に戻すこと、微生物たちをうまく活用して自分たちの生活の後
始末をしていく」という意識が生まれたのだと言います。
おじいさんは、「里芋とほうれん草を育てる時は、あの山の土を取ってこい」
と教えてくれ、それらを畑に蒔く時「その土をこっそり検査に出してみたら、
その山の土は石灰の層でアルカリ性だったわけ。僕らで言うと石灰を蒔いたり
する作業のことで、その天然をおじいさんは知っているんだよね」と佐藤さん
は先人の知恵を目の当たりにします。
「農業は科学的な面白さもあって土づくりも味噌をつくるのも同じ原理だと分
かったよ。うまくいくと野菜にも虫はつかないし、草も丸い葉の背の低い草し
か生えないし、成功した時はうれしいね」と自然を相手に「土に還す仕事」を
目指して試行錯誤する様子をとても楽しそうに話してくれました。
【地域活性化につながる「農」】
地域の人と顔をつないでもらうことで農地を借りたり農機具を譲り受けたり、
近所のお年寄りに昔から伝わる知恵を伝えてもらったりして、佐藤さんはそう
して「農ある暮らし」を楽しんでいます。
そして放棄されてしまった農地を活用し、田んぼの守りをし、研修生を呼び込
むことで地域を盛り上げます。
地域の人や行政と都会をつなぐ。「よそ者」だった彼の地域貢献度はとても高
く、犬山市も耕作放棄地を活用したいと、佐藤さんに相談に訪れるのだそう。
「犬山という土地は名古屋から高速でも電車でもすぐだから、都会から畑を
やってみたい人にとってはいい距離なんだよね。だから市民農園やクライガル
テンなんかも行政(犬山市)も作りたいって言っていて、僕らが試しに関わっ
てみようという動きもあるよ」とそこで今までに集まった農機具などのレンタ
ルなども考えているのだと言います。
今後も増えていくであろう、後継者不足による使い手のなくなってしまった農
機具。「農を始めてみたいけど、何もないし」という人に活用してもらうこと
が可能になれば、農に対する敷居も低くなるのではないでしょうか。
(所員:浅井・高井)
犬山農芸
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FaceBook 善師野は自然の王国
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有限会社プラネット
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2015年3月4日水曜日

37.どうなる日本の農業-「危機」を煽るのではなく「魅力」で解決するための一考察-(2)

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 2015年2月26日発行 株式会社フルハシ環境総合研究所
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【本日の特集】
1.どうなる日本の農業
-「危機」を煽るのではなく「魅力」で解決するための一考察-(2)       
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【私たちの農業への関わり】
私たちの親会社(フルハシEPO株式会社)は、木質バイオマスの利用を通して、
林業、木質リサイクル、木質バイオマス発電まで植林からバイオマスエネルギー
に携わる企業ですが、その一方で、環境汚染や化学肥料、化学農薬あるいは放
射能汚染を危惧せず安心・安全な食を自ら求めたい信念から、生物多様性にも
繋がる有機無農薬栽培農業「オレンジ・サン・プロジェクト(OSP)」に取
組んでいます。2007年から野菜やお米の生産にチャレンジし、昨年から愛知県
知多半島で耕作放棄されていた田んぼを開墾して農業を行っています。現在の
農地は5反(5,000m2)です。周りのみなさまに教わりながら、実際に手がけて
みると、周辺のご高齢の農家の方々から声をかけられることも珍しくないよう
です。そう遠くない近い将来には彼らがあきらめざるをえない農地も委託を受
け、数ヘクタールの規模で農業生産を行っていくことになりそうです。私たち
フルハシ環境総研スタッフもですが、社員やその家族、そして地域住民のみな
さんにも田植え祭りや収穫祭(稲刈り)に参加して、植物や土、虫たちなど自
然にふれあう機会も作りつつ、食糧自給率の向上につながり、「食の安全保障」
が高まるように、私たちができる可能性を探究しています。
【地方に集う若者たち】
ここからは、前号で前置きした話題についてお話しします。
愛知県犬山市に「犬山農芸」という農業の職業訓練校があります。理事を務め
るのは佐藤練さん。彼との出会いは2009年アースデイ愛知というイベントの実
行委員会でした。名古屋市の栄という繁華街の真ん中で行ったアースデイのイ
ベントは、ほぼ有志で集まったボランティアの若者達によって運営され、佐藤
さんはその中心人物。どこで仕事をしているのだろうか?と不思議なほどイベ
ント運営に時間を割いていたように思います。
そして佐藤さんはアースデイ以外にもそうした社会的活動をしていくのですが、
都会でそういった環境に関する活動をすることに違和感を覚え、当時住んでい
た新栄の街中から緑豊かな犬山市善師野に引っ越し、農業は未経験だったもの
の犬山農芸を立ち上げるに至ります。
今年で犬山農芸は職業訓練実施施設として4回生目。耕作放棄地だった約2ヘ
クタールの土地を借り、無農薬・有機栽培の野菜やお米づくりを行っています。
毎年5月から11月の半年間、各回20人の訓練生が作物を育てること、百姓の里山
仕事を学び、メンバーにはそれぞれ自分の領域も与えられ、色々な実験をしな
がら言わば「サークルのような」楽しい時を共有しているそう。そして今年の
1月ついに4組の就農者を生みだしました。(就農した彼らは、犬山農芸の後、
新規就農の為の研修を2年受けています)
「なんかごめんね、成功した例もないし、食っていくのもギリギリだし話せる
ことなんてないと思うけど」と謙遜した態度で話しをする彼ですが、「今年就
農した彼らが今後も食べていけるなら、それが実績になるかもね」とのんびり
笑います。就農した4組は同じく犬山善師野界隈に農地を確保しており、それ
は耕作放棄地が増える一方の地域にとっては大きな希望の光のように感じます。
【「農」を仕事ではなく、暮らしの営みと捉え直す】
その他の卒業生たちはというと、農業一本で暮らすことは選択していないもの
の、それぞれ自分の仕事をしながら畑をやったりと「農ある暮らし」を実践し
ているといいます。
佐藤さん自身の例を見ても、犬山農芸で採れた作物を販売して収入源としてい
るわけではないので、他にも仕事をしています。
例えば障がい者の子どもたちのいる施設と連携を取って、子どもたちに農作業
を体験してもらう仕事。田畑仕事のない11月から2月までは造園の仕事を手伝
い、5月から10月の夜は木曽川で犬山の鵜飼いの船頭の仕事を。元々大工だっ
たこともあり、単発で太陽光パネルの設置などを請け負って生計を立てていま
す。しかし、それらは「稼ぎ」として考えているわけではなく、農作業も含め
て全てが生きる上で必要な「営み」だと考えています。
善師野に来て5年、今後もそういう暮らしをしていくのか尋ねると、「うん、
自分のできる小さい範囲でやっていくだろうね。農芸はある意味サークルのよ
うな、人が集まって楽しい場ではあるけど、やっていて農というのは家族単位
とか、もっと少人数でやる方がうまくいくと実感した。農芸は昔のお寺の檀家
さんの集まりだったり、集落のコミュニティーのような役割で、それはそれと
して人手がいる時に集まる存在でよくて、あとは各々で家庭でやったりしたら
いいと思う」と答えてくれました。
「農ある暮らし」は元々どの地域、どの家庭でも日々の暮らしと共に行われて
いたこと。だから誰にだってできる、大人数でやってみたことでその事に気
がついたのだそう。
昨今は「仕事」と「プライベート(暮らし)」を切り離して考えがちですが、
「農」は暮らしと直結した生きる上で必要な営みであり、だからこそ大地の上
に生きる人なら誰だってできる可能性を持っているのだと思います。毎日食べ
るものを育て、保存する術を学び、助け合いのコミュニティをつくり、暮らし
の基盤をつくる。便利な世の中になり忘れてしまったことを、佐藤さんはもう
一度実践しています。「ギリギリの生活」と彼は言うもののそれ自体を問題に
しておらず、「農ある暮らし」を通じて人として本来の豊かな営みを築いてい
る。そこには現在の農業の危機を解決する糸口があるように思えるのです。
(所員:浅井・高井)
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犬山農芸
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【本日の特集】
 1.どうなる日本の農業
     -「危機」を煽るのではなく「魅力」で解決するための一考察-(1)
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【2015年正月、日本の農業の危機に直面】
我が家では日々食べるお米を、買ったことがありません。
主人の実家の田んぼでできたお米や、母方の祖母がつくったお米をいただいて
いました。
とても恵まれた環境です。しかし、そんな恵まれた環境も、今年暗礁に乗り上
げてしまいました。
その原因は、主人の実家が所有する田んぼは知人のおじいさんに作ってもらい、
それを分けていただいていたのですが、おじいさんも80歳を過ぎ、「今年は田
んぼをできない」と言われました。そして同じく80代の祖母も、「今年は田ん
ぼやるか分からんよ」とお正月に言うではありませんか。
まさに自給率が下がる要因「生産者の高齢化」を目の当たりにしたのです。
(しかも同じタイミングで)
【日本の農業の現実】
現在、日本の農業就業人口(※1)は239万人(平成25年)、日本の人口(※2)
の約1.9%になります。農業就業人口のうち65歳以上は147.8万人と約61.8%で、
平均年齢は66.2歳。人口のたった2%以下で農作物を作り、その中でも企業で
言えば定年を向かえた年齢層が半数以上なのです。
恥ずかしながら、我が家のお米問題を通して、いかに第一次生産を高齢者の
方々に頼ってきていたのかを痛感しました。5年から10年先に日本の農業はど
うなるのでしょうか?
そして日本の自給率はカロリーベースで39%(平成25年)と主要先進国の中で
は最も低い水準です。お米に関して言えば、96%と高い数値に感じますが、そ
もそも肉類や油脂、小麦を沢山使う料理を食べるようになった「食の欧米化」
により、米の消費量が減ったためこの数値が出ていると言えます。
こんな状況で、我が子が大人になった時に、孫が生まれた頃に、日本のお米や
野菜を食べていられるのでしょうか?食糧調達を半数以上輸入に頼る中、何ら
かの事態がきっかけで輸入がストップしてしまったら?
【世代交代】
もっと農業を志す人が増えたらいいのに、そう思うのですが、それだけでは他
力本願。実際、主人の実家の田んぼや祖母の田んぼは次の世代の私たちが考え
ていかなければいけないのです。
愛知県犬山市で20~40代の若者たちで就農したい人材を育成する目的も含め、
田んぼや畑づくりを5年前から始めた人たちがいます。
彼らはなぜ農を選んだのでしょうか?危機を煽るのではなく、農の魅力で日本
の農業の問題を解決する一事例として、農ある暮らしの魅力について話を伺い
に行きました。
※1 農業就業人口とは、15歳以上の農家世帯員のうち、調査期日前1年間に農
     業のみに従事した者又は農業と兼業の双方に従事したが、農業の従事日
     数の方が多い者をいう。
     資料:農業労働力に関する統計(農林水産省)
※2 平成25年 127,298,000人(総務省統計局)
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